「40代半ばの研究者 あと2つか3つの研究しかできない」

 10年ぶりに新しい本『比較教育学のアカデミック・キャリア―比較教育学を学ぶ人のための多様な生き方・働き方―』(東信堂)を編みました。共に編んだ先生方と,2回目の緊急事態宣言が明けた時に,久々に「対面で」再会しました。短い時間でしたが,とても楽しく,幸せなひとときを過ごすことができました。コロナ禍にもかかわらず1冊の本を編むことができたこと,編者のお一人の市川桂さんに新しい就職先が決まったこと,とお祝いが続きます。

 研究者は,本を一緒につくった相手と一生口を聞かなくなることもある,と院生の頃に聞いたことがあります。ですが,相手を思いやることができる編者の先生方とはそんな不幸な結末は待っておらず,近い将来,また次の本を一緒に出すことができれば,と少なくとも私は考えています。

 さて,お祝いの席で,もう一人の編者である森下稔先生(東京海洋大)が気になる一言を仰いました。「僕が鴨川さんぐらいの時に,名古屋(大学)の山田肖子さんもやっぱり同世代の40代半ばで,この後,あと3つ,いや実際は2つぐらいのテーマしか研究できないねっ,て言ってたかな」と。

 森下先生も山田先生も,比較教育学や国際教育開発分野などそれぞれの分野で著名な研究者です。以前,山田先生が代表を務められていた科研プロジェクトの末席に加えていただいたことがありますが,その時に,山田先生や森下先生が議論されているお姿を拝見しながら,「いつかこんな風に,,,」と野望を持っていたものです(そのプロジェクトでの議論の一端をお二人がまとめられた『比較教育学の地平を拓く―多様な学問観と知の共働』は,ぜひご一読いただきたい書です)。

 私もあの時の先生方と同じぐらいの年齢になったわけですが,随分と前を歩んでおられる先生方が,40代半ばであと2つか3つのテーマとは!私のようにのんびりした歩みなら,2つ,いや1つかと多少不安になってしまいます。

 幸い,むくむくと湧いてきているテーマが1つあります。もう1つのテーマは,まだ想像がつきません。ただ,戦略的にもう1つのテーマというよりは,いつもそうであるように,自然にテーマが湧き出てくると信じています。

2021年04月26日